液晶エラストマを用いた人工筋肉
(Artificial Muscle actuated by Liquid Crystal Elastomer)

近年、液晶の光学的異方性を巧みに利用して液晶ディスプレイは著しく進化してきた。これは、棒状分子で構成されている液晶相の異方性に起因するものである。本研究は、液晶のその異方性を力学的エネルギー変換に利用する試みである。本来、筋肉は化学的エネルギーを力学的エネルギーに変換するものであるが、液晶高分子ゲルではその異方性を等方性に変換することによって、その力学的エネルギーを獲得することである。しかしながら、これまでは温度変化による、異方性ネマティックゲル−等方性ゲル間での可逆的な相転移による異方的収縮・膨潤を駆動力としたので、実際の人工筋肉への応用になると熱の排出の問題が生じる。
 本研究では、その問題点を踏まえて、高分子液晶エラストマに低電圧応答性液晶をさらに融合させ、その融合した液晶の電気応答性を液晶エラストマ全体の異方的収縮・膨潤の駆動力として用いる(図1)。現在本研究は、その応用可能性から集中的に行なっている。図2は、液晶エラストマに電界をON-OFFした時、任意の1次元のところ(X)を時間連続的に取って並べたものである。液晶エラストマは、ONで収縮し、OFFで膨潤して、もとに戻る様子が良く分かる。

図1.電界ON−OFFによる液晶エラストマの電気応答。
図2.電界ON−OFFによる液晶エラストマの収縮・回復